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落ちました。バイクごと。

2005年07月17日

まずい、と思った瞬間には、すでに滑っていた。
わたしは、バックドロップを喰らったような姿勢で、急斜面に叩き付けられた。
ヘルメットが、がつん、と鈍い音をたてて何かに当たった。
スポーツスターが一瞬直立し、のけぞる様に倒れてくるのを、視界の隅でとらえていた。
やってしまった。
林道を、滑落してしまったのだ。

7月17日、日曜日、夕方の5時半である。
松本市街から、四賀村に抜ける峠道。
(馬飼峠、という名は、後で知った)
久しぶりにスポーツスターに乗って、つい、ムチャをしてしまった。
初めて通る峠道は、だんだんと狭くなり、やがてオフロードになった。
ガレ場になり、ぬかるみになり、
道は、どんどん険しくなっていく。

途中で引き返せばよかったのだ。
それが出来なかったのは、判断力の不足。
送電線のメンテナンスルートらしく、軽自動車サイズのわだちが、
なんとなく行けそうな気配を漂わせていた。
バイクのトレッドも残っていたし。
(後で思い起こせば、あれはトライアル車のものだった)

峠のてっぺんは、鞍状の狭いもの。
そこから、四賀村側に降りていく道は、今までに比べたら平和に見えた。
その先の、崩落部までは。

ダブルトラックのわだちだったのが、
下草に覆われて、急に細くなっている。
左におちる崩落斜面を、トラバースするように、まるで獣道である。

一気に行ったれ、と勢いをつけて通る。
崩落部を、あと少しで渡りきる、というところで、スタック。
梅雨時の林道は、ひどく不安定なのを、その瞬間まで忘れていた。
アクセルを開けると、リアタイヤは左に大きく滑り、
わたしは、バイクとともに、谷に転がり落ちていった。

気付いた時には、頭を下にした状態で、斜面に倒れていた。
4、5メートルも落ちたろうか。
バイクは、と見ると、逆さの状態で、斜面の切り株に引っかかっている。
ガソリンが、ぽたぽた、とこぼれている。
あわててメインスイッチを切る。
這いずるように、斜面をよじ登る。
ヘルメットを脱ぐと、視界が妙に黄色い。
頭がぐらぐらする。
ひどくぶつけたのだろう、腰や肩が、ずきずきと痛む。

調子が悪い時は、いつもこうだ。
体力も、反射神経も鈍っている。
しかも悪いことに、その自分の不調を、きちんと判断しきれていない。

今日だって、うまく乗り切るチャンスはあったはずだ。
  あの分かれ道を右に行っていれば。
  途中で、引き返していれば。
  バイクを停めて、道を調べていれば。
  スタックした時に、落ち着いていれば。
選択したこと、しなかったことが、ことごとく裏目に出ている。
あげくが、このざまだ。

情けない。

斜面の途中で、スポーツスターは、腹を上に向けて沈黙している。
どう見ても、一人では引き上げられそうにない。
お世話になっているバイク屋さんに、一報を入れて、
わたしは歩いて峠を下ってゆく。
歩くたび、身体の節々が、ギシギシと痛む。

痛恨、とはこのことか。

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