限界SS:本流 > 2005年03月

首都高環状線C1:内回り

2005年03月25日

3月25日、夕刻である。
わたしは東京にいて、車の中で、しかも渋滞にハマっていた。
(ラジオからはろくでもない音楽が流れている)


4号新宿線より、首都高都心環状線、C1、内回りへ。
(もう何時間も、運転しっぱなしだ)


2車線、どちらもが流れていない、霞ヶ関トンネル。
(きっと、イライラしていたのだろう)


3号渋谷線への分流へ、渋滞は吸い込まれていた。
空いている左の車線を、アクセルを踏み抜ける。
(何しろ、久しぶりの首都高なのだ)


2号目黒線からの合流を、無理矢理にリードして、アクセルを踏む。
(ちょっと意地が悪かったかもしれない)


PM 6:15 。
車が流れだす。
芝公園。東京タワー。
トラックのテールランプ。ジャガーのクラクション。
通り過ぎてゆく、ビルの矩形。金融屋の看板。
!!!
唐突に、ビルの谷間に、月が浮かんでいた。
不思議なほど大きく見える。
満月である。


浜崎橋ジャンクションより右車線へ。11号台場線へ降りてゆく。
そのまま、左車線を、レインボーブリッジへ。
観覧車。テレビ局の奇妙な建物。
工場の灯り。ビルのシルエット。
海。屋形船。
満月。


あたりは少しずつ薄やみに包まれつつある。
地上の灯りと、空の明るさが微妙に入り交じって、
たそがれ時の独特の空気である。
いつも思うのだが、東京は、一日のうちでこの時間帯が一番美しい。
そして今日の満月は、ことさらだ。
残念なのは、カメラを持っていなかったこと。
更に残念なのは、美しい瞬間は、長くは続かないこと。
注意していなければ、その最も美しい瞬間は、すぐにうつろい、消えてしまう。
(幸いにも、今日は、その瞬間に巡り会えたようだ)


視界の中に、無数のテールランプが映る。
隣の車線を走っている、ベンツのドライバーには、
この景色はどう見えるのだろう。
先ほどまでわたしの車をあおっていた、トラックのドライバーには?


あの満月を見た時、皆がみな、ふっと息をのんだ音が聞こえた。
(聞こえたような気がした)
(わたしもあなたも区別がなくなってしまった)


幻想である。

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