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タンクのつぶやき

2004年07月01日

やっと用事を済ませて、家に帰り着いた。メインスウィッチをオフにして、サイドスタンドを出す。ハンドルを左に切って、バイクから降りる。グローブを外し、ヘルメットを脱ぐ。

ふと、耳を澄ますと、変な音が聞こえる。なんだろう?エンジンの冷える時の、金属音とも違う。ぶつぶつと呟くような、小さい音である。どこから聞こえてくるのか。オートバイの上に身体を傾け、音源を探ってみる。


ああ、わかった。ここだ。わたしは、スポーツスターの細身のガゾリンタンクに、耳を付けてみる。今度ははっきりと聞こえた。ボコリ、ボコリと、ガゾリンが沸騰している音だ。絶え間なく沸騰している。よく耳を澄ますと、気化したガソリンが逃げていく、シュウシュウという音も聞こえる。


エンジンの熱が、ガソリンタンクにも伝わっているのだろう。それにしても、驚きである。ガソリンが気化しやすいと知ってはいたが、こんな勢いで沸騰しているなんて。


こんなとき、オートバイは生き物のように感じられる。ガソリンという危険物を喰らう、魅力的な生き物。エンジンを切ると、ぶつぶつと文句を言う。まだまだ走り足りないと言っているかのようにも聞こえる。
(そして、沸騰するガソリンは、まるで、自分の心の様でもある。今にも火がつきそうな、煮え立った感情)


しばらくすると、ようやくエンジンが冷えてきた。さっきまでの、タンクのつぶやきも聞こえなくなった。わたしは、後輪にロックをかけた。
おつかれさん。ゆっくりと、休んでくれよ。

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