坂に挑むチャレンジャー達
2004年06月27日
浅間温泉は、朝からざわついていた。他県ナンバーの自動車が、たくさん停まっている。色とりどりのジャージの、ロードレーサーが行き交う。今日は、“ツール・ド・美ヶ原2004”の当日だ。自転車の具合を確かめる者、ウォームアップをしている者。皆、準備に余念がない。そろそろ、レースの始まる時間だろう。
温泉街を抜けて山道に入ると、林の中をまっすぐに登っている道は、コース一番の急坂だ。歩いて登るのもキツい。右側の水路は、激しく水音をたてて流れている。わたしは、ゆっくりと歩いて登っていた。何人ものギャラリーが、同じように登っていく。急坂の終わり近くに、赤い鳥居がある。その辺りまで上がってみようか。
ああ、桑の実が、色づいている。そんな事を考えながらぼんやりと歩いていると、背後からふいに、ギシギシと車体を軋ませて、先頭グループが上がってきた。レースが始まったのだ。振り返ると、坂道を埋め尽くすように、選手達が、登ってくる。
さすがに先頭グループ、脇目もふらずに登っていく。ハンドルにしがみつき、クランクを踏んでいる。腕の筋肉がリズミカルに波打っている。全身を使って、「ダンシング」と呼ばれる、立ち漕ぎをしている者もいる。流れ落ちる汗。呼吸が荒い。熱気がこちらまで伝わってくる。ぎちり、ぎちりと、ディレーラーを軋ませて、皆、必死の形相である。
なぜ、こんなにも必死になって、登るのか。原始的な欲求。負けたくない。それは、他人との勝負でもあるし、また自分との戦いでもあるのだろう。漕がなければ止まってしまう、単純なつくりの自転車であるだけに、むき出しになった、生命力のぶつかり合いである。
漕ぎ続けるか、あきらめるか。そのどちらかしかない。格好をつける余裕など無い。とにかく、漕がなくては。チャレンジャー達の気迫は、離れて見ているわたしに、びりびりと伝わってくる。
自転車は、途切れることなく、続々と登ってくる。がんばれ、がんばれと呟きながら、わたしも坂を登っていく。
追記:このレースのリザルトが発表されました。居住地をみると、北は北海道から南は沖縄まで、まさに全国から参戦しています。そのチャレンジ魂には、惜しみなく拍手を送りたいものです。みなさん、ほんとうにお疲れさまでした。