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XT225のおもいで。

2004年05月20日

どんよりと曇っていた空は、昼過ぎには雨を降らせ始めた。

午前中のうちに、乗っておくのだったと、わたしはちょっと後悔した。

軒下で、XLH883の小ぶりなヘッドライトが、恨めしそうにかしいでいる。

20代のわたしなら、これくらいの雨の中でも平気で走り回っていた。

当時は、XT225セローを所有していて、どこへ行くにも一緒だった。それこそ、台風の日にも、わざわざ氾濫する河を見に出かけたりしたものだった。しっかりした雨具を装備さえしていれば、雨のツーリングも、楽しみの1つになる。当時、住んでいた神奈川から、八王子を越えて、五日市に抜ける林道があった。ちょっとした気分転換に、その林道を良く走った。たしか醍醐林道といったのではなかったか。

新緑の頃の雨の日には、車は滅多に通らないその林道を、スタンディングで、ジョギング程度のスピードで流す。どこへ行くわけでもなく、林道の終点で、折り返して戻ってくる。杉林のなかを、ぬかるんだ路面が続く。誰も通らない。いつもなら軽快に響くエキゾーストノートも、そんな日はくぐもって聞こえる。バイクを停めて、エンジンの火を落とすと、遠くの方で静かに、カッコウが鳴いている。

古ぼけた、安アパートに住んで、路上でセローを整備していた。毎晩のように、バイク乗りの友達が集まってくる。小銭を出し合い、ちょっとした食料と酒を買ってきて、部屋での宴会。色々な事が、うまくいかなくて、いつも何かに不満を感じていた。生活のすべてが、バイクを中心にしていたような気がする、あの頃。


何年も経って、わたしは色々なものを(ささやかなものばかりだが)手に入れた。新しい家族だとか、車だとか。不満もあるが、おおむね満足できる生活である。それでも、ごくたまに、あの頃の事を思い出す。

あれから、わたしは成長しているのだろうか。理由も無く走り回っていたあの頃から、いったいどれだけ成長したというのだろう。目的地の無いツーリングを、今でも続けているのではないかと、漠とした不安を覚える。

窓の外は、いつ止むとも知れない、五月の雨が降っている。

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