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空に三日月

2004年05月25日

夕方から、883に乗って出かけてきた。
知人の事務所を訪ね、その後、また別の事務所で打ち合わせである。最期の打ち合わせが終わり、帰宅の徒についたのは、陽が沈みきったあとだった。
エンジンに火を入れる。

冷えきったエンジンを暖めながら、ふと見上げると、月が出ている。
だれかが爪で引っ掻いたような、ほそい三日月だ。

こんな三日月が好きだと、誰かと話したことがある。
今と同じように、空を見上げていた。
たしかにその瞬間、その誰かとわかり合えたはずだった。
あれはいつの事だったのか。
そして相手は誰だったのか。

記憶の色がなくなって、感覚だけが残っている。
こんな風にして、少しずつ忘れていくんだな。
透明な喪失感である。

バイクにまたがり、ヘルメットをかぶる。
走り出すと、風は、冷たかった。

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